君は永遠にそいつらより若い(2021)D〜レズになってしまいました
★数行で映画紹介しなければ
芥川賞受賞作家・津村記久子のデビュー作で第21回太宰治賞を受賞
就職も決まり卒業を間近に控え、日常をただなんとなく生きていた大学生の主人公が、
暴力や児童虐待、ネグレクトといった社会の闇と、
それらに伴う悲しみに対峙することになる姿を描いた。
★ショウトしょうとSHORT
主人公は言う。
私は処女だというのが絶望的に苦しいんです。
お前は欠陥品だと言われているような気がする。
もてない女子大生、とうとうレズになりました。
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★概要ネタバレは基本情報のあとに
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★基本情報
監督 吉野竜平
脚本 吉野竜平
原作 津村記久子
製作 深谷好隆
出演者 佐久間由衣
奈緒
小日向星一
笠松将
葵揚
森田想
宇野祥平
馬渕英里何
坂田聡
音楽 加藤久貴
主題歌 小谷美紗子「眠れない」
撮影 平井英二郎
制作会社 マウンテンゲート・プロダクション
製作会社 「君は永遠にそいつらより若い」製作委員会
配給 Atemo
公開 日本の旗 2021年9月17日
上映時間 118分
★概要ネタバレ
大学卒業を間近に控えたホリガイは、児童福祉職の試験に合格し、
あとは卒業論文を仕上げるだけという手持ちぶさたな日々を送っていました。
ホリガイは、大学のゼミのコンパの席で処女であることをからかわれますが、冗談で返しその場をやり過ごそうとします。しかし別の男子学生が、「なんでもそうやって冗談にしてしまう」と言って、絡み始めました。
ホリガイは遅れてやってきた友人のヨシザキのところに避難し、そこでホミネという男子学生と知り合います。
彼はアパートの階下に住むネグレクトの子供をかくまったため、誘拐犯に間違われ、嫌疑が晴れたあと、ヨシザキが迎えに行って警察から帰ってきたばかりでした。
夜の道をふたりで歩いていると、ホミネが「そもそもどうして児童福祉司になりたいと思ったの?」と尋ねてきました。
「話すと長くなるから今度会ったときに話すね」とホリガイは応え、卒論のためのアンケートに答えてほしいと用紙をホミネに手渡しました。次会うときに、と挨拶を交わしてふたりは別れました。
「人の生まれ育った環境と将来の夢」の関係を考察するため、ホリガイは周囲の友人たちにアンケートをお願いしていました。
友人のひとりから「集まったアンケートをただでは渡せない。授業に出てノートをとってきてくれたら渡す」という交換条件をつきつけられたホリガイは、仕方なく引き受けることに。
ところがその授業が一時間目だったため、寝坊して遅刻してしまいます。授業が終わったばかりの教室で呆然と立ち尽くしていましたが、たまたま彼女の横を通り過ぎようとした女子学生に声をかけ頼み込んでなんとかノートをコピーさせてもらうことができました。
女子学生はイノギと名乗り、このことをきっかけにふたりの交流が始まります。お礼におごると言ってふたりで行ったカフェバーですっかり酔いつぶれてしまったホリガイをイノギは自分の下宿先に連れて帰りました。
目を覚ましたホリガイは、しばらくイノギとゲームをしていましたが、負けてばかり。テレビでは未解決事件の特集をしていて、失踪したまま行方がしれない少年のことを報じていました。
ホリガイは「ゲームはあまり好きじゃない。自分は戦う前から負けることを前提にしている女なんです」と話し始め、イノギは静かに聞いていました。
小学生のときに、ひとりの男子生徒と大喧嘩したことがあり、明らかに悪いのは相手で、こちらに落ち度はなかったのに、もうひとりの男子生徒がいきなり立ち上がり、私を殴った。2人に袋叩きにされて、なんて理不尽なんだろうと感じた、それ以来、そんなふうに思うようになったのだとホリガイは続けました。
それを聞いたイノギは「その場にいれなかったことが悔しいわ」と呟き、憤ってくれました。
そんな折、ホリガイは、ヨシザキからホミネが死んだと聞かされます。交通事故とのことでした。児童福祉司になりたいと思ったきっかけを聞いてもらえないまま、ホミネは突然この世を去ってしまいました。広島で行われる葬式にヨシザキは出席するとのことでした。
しばらくして大学で久しぶりにヨシザキをみかけたホリガイは、彼を呼び止め、頼んでいたアンケートについて話しかけました。するとヨシザキは人が変わったようにきつい調子で「うるさいな!お前は人に頼ってばかりだ!」と怒鳴り、振り切るように立ち去りました。呆然とするホリガイ。
バイト先で3ヶ月後にやめるホリガイの代わりを務めるため研修中の安田が職場に出てこなくなったので、ホリガイは彼のアパートを訪ねて飲みに行こうと誘いました。
彼は自分の悩みを打ち明け、すっかり酔っ払ってしまいました。以前、彼が洋モノのポルノ写真の切り抜きをノートから落とした時、ホリガイが笑ったことで彼はひどく傷ついていました。彼と共に、自分のアパートに帰ってくると、そこに自転車に乗ったイノギがいました。
部屋に入ると安田はすぐに眠ってしまい、ホリガイとイノギは夜遅くまで、2人で話し込みました。ホリガイは児童福祉司として自分が務まるのか不安を感じていることを吐露し、イノギは「なんで児童福祉司になろうと思ったの?」と、一度その聞き手を失くした質問をしてきました。
ホリガイは初めてイノギの部屋に行ったときに、テレビで放送していた失踪した少年の話をはじめました。あの時、自分は高校2年生で、その少年がどうしているのだろうと考えたら眠ることもご飯も食べることもできなくなった上に何もできない無力感に愕然とした、いつか少年を見つけてあげよう、探し出そうと思ったのがきっかけだったと告白します。
「今、この瞬間、テレパシーで話せるとしたらなんて声かける」とイノギに質問され、ホリガイは応えました。「いつかきっと私が見つけ出すから諦めないで待ってて。君を弄んで侵害しているそいつらはどんどん年をとって弱っていくから、絶対諦めないで。君は永遠にそいつらより若いんだよ」
こんなことしか言えないやつなんですと落ち込むホリガイにイノギは言いました。「その言葉で十分だよ」と。
そして自分の秘密を公開しようかなといって、就職セミナーの授業で、「不潔だから髪をあげろっていわれたんだよね」と言うと、髪をかき上げて耳元をホリガイに見せました。
耳にはひどい傷跡があり、ホリガイは衝撃を受けました。「採用してくれるかわからない人にそこまで腹を割れないわ」とイノギは呟きました。
朝、イノギが帰ったあと、目を冷ました安田もおとなしく帰っていきました。
あの夜の気分を背負ったまま学生生活最後の冬を迎えたホリガイ。バイト先では送別会をしてもらいましたが、「私がいなくなってもこの工場は留まることなく進んでいくのだ」という印象だけが残りました。
卒論も集まったアンケートをもとに仕上げましたが、まとまりのないものになってしまったという感は拭えません。
卒論を提出したあと、ホリガイは校内でヨシザキに呼び止められました。ずっと探していたと言うヨシザキ。「卒論は提出した?遅くなったけど」と言って、彼は例のアンケートを手渡してくれました。「遅いね」といいながら、受け取って礼を言うホリガイ。
その中に、ホミネが回答してくれたものがありました。用紙の裏にはイラストが書き込まれ、「ガンバレ」と書いてありました。
「ホミネが死ぬ前の晩、ホリガイさんに渡しておいてと言われたんだ。実はホミネは交通事故じゃなかった。葬式で広島に行った時に、弟くんから聞かされた。ずっと一緒にいたのに、まったく気づかなかった、そんな自分自身に腹がたって、ホリガイにきつくあたってしまった」とヨシザキは頭を下げました。
卒業式が終わり、謝恩会の時間待ちをしていたホリガイのもとにイノギからラインがきました。「家に牡蠣がいっぱい。今度牡蠣鍋を食べよう」という文面で、ホリガイはすぐに返信しました。「今からでもいい?」
「いいよ」という返事が来たので、謝恩会に出るのをやめ、会場を出ようとするとばったりヨシザキに会いました。「ホミネの部屋を整理してたんだ。あした、ホミネの部屋に来てよ。形見分けを持って帰ってほしい」
考えておくと伝え、ホリガイはイノギの家へと向かいました。おいしい牡蠣をたっぷり食べてご満悦のふたり。
雑炊をするために、ご飯のパックを探しに行ったイノギにホリガイは不安を吐露し始めました。「自分は普通の人が持っている根本的な部分が欠落している。普通の人が普通に気がつくことが出来ない。その証拠として私は今でも処女なんだと思う。絶望的に誰も手を出さない。欠陥品だと言われているみたいで、こんな自分は人の人生に介入する資格なんてない」
「耳のキズにも気がつけなかった」と戻ってきたイノギに語るホリガイ。「気付かれないように頑張っているんだから」と言うイノギに「それでも気づかないといけないと思う」とホリガイは応えました。
イノギはホリガイのもとに歩み寄り、唇を重ねました。
ホリガイは一瞬驚きますが、すぐにそのキスを受け入れました。
イノギは耳のキズの原因になった過去の恐ろしい体験を語り始めました。
学校帰り、自転車に乗っていたイノギは後ろから車にあてられ、転落。
車に無理やり乗せられ、暴行を受けたのです。
そんな経験をした娘を持て余して、両親の仲もおかしくなり、離婚。
それから小豆島の祖母のもとに引き取られ、生活してきたといいます。
「そこにいて救けられなかったことが悔しい」と語るホリガイにイノギは言いました
「倒れている私を見つけてくれた女の子は、友だちに先生を呼びに行かせ、一人残って、私の手を握ってくれた。
その女の子はホリガイさんに似ていたよ」
その夜、ふたりは肌を重ね、翌朝、イノギの家の前で別れて、ホリガイはホミネのアパートへ向かいました。
そこでヨシザキからホミネの遺書を見せられます。
遺書を読んだホリガイはホミネが気にしている階下の男の子をこのままにしておいてはいけないと言い出し、
階段を降りていきます。
しかしドアは施錠されていて、チャイムを押しても返事がありません。
ベランダから階下へ降りようとするホリガイをあわてて止めようとするヨシザキ。
しかし、ホリガイは危険をおかして下のベランダへと降り、
ガラスを割って、室内に踏み込むと、毛布をかぶって震えている少年を発見しました。
その時、イノギから「会えませんか」というラインが来ていましたが、
連絡が取れないまま、ホリガイは故郷の和歌山へと戻っていきました。
少年は児童施設に入ることになり、ヨシザキが時々会いにいっているそうです。
それから3ヶ月後
ホリガイは小豆島行きのフェリーに乗っていた。
イノギはその後、大学を休学し、故郷に戻っていた。
ぽつりぽつりと連絡は取り合っていましたが、声は久しく聞いていませんでした。
電話でイノギの祖母にそちらに行くことを伝えると、
イノギから折り返し電話があった。
「もうフェリーに乗ってるんだって?」
ホリガイはイノギへの想いを伝えました。
「イノギさんのことずっと気にしている。
これからもずっと気にするし、
愛想つかされても生きている限り気にしている」
というホリガイにイノギは
「会えるの楽しみにしている」と応えた。
卒業後
児童福祉司となったホリガイは先輩の職員と共に、
虐待が疑われる少女の家にやってきた。
「何がなんでも安否を確認するぞ」と言う上司の言葉に頷き、
ホリガイは家のチャイムを鳴らした。
この仕事への適性はまだわからない。
THE END
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筆者の公式サイト話題の映画とか一過性の映画でなくて、
100年経過しても名作と言われる映画を追いかける
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