人数の町(2020)C〜隔離された世界
人数の町(2020)C〜隔離された世界
★数行で映画紹介しなければ
衣食住が保証され快楽をむさぼる日々を送れるが、
決して離れることはできない奇妙な町を舞台に描くミステリー。
★ショウトしょうとSHORT
奇妙な話です なぜか印象が残ります
立花恵理 に 見入りました いい女だ。
========
★概要ネタバレは基本情報のあとに
========
★基本情報
監督 荒木伸二
脚本 荒木伸二
製作
菅野和佳奈
関友彦
製作総指揮 木下直哉
武部由実子
出演者 中村倫也
石橋静河
立花恵理
橋野純平
植村宏司
菅野莉央
松浦祐也
草野イニ
川村紗也
柳英里紗
山中聡
音楽 渡邊琢磨
撮影 四宮秀俊
編集 長瀬万里
制作会社 コギトワークス
製作会社 木下グループ
「人数の町」製作委員会
配給 キノフィルムズ
公開 日本の旗 2020年9月4日
上映時間 111分
★概要ネタバレ
借金取りに追われた蒼山は、ビル街の隙間に逃げ込んだものの追いつかれ、殴られます。
ポールがやってくると、借金取りを殴って気絶させた。
面識のないポールが出現して自分を救ってくれたのに戸惑い、
状況を呑み込めずにいた。
ポールに「居場所ないんだろ、(居場所)いるか?」と言われ、誘われてバスに乗り込んだ。
蒼山が乗り込んだバスには、ほかにも大勢の人が乗っていました。
バスはひたすら長い距離を移動します。
日がとっぷり暮れて夜中になった頃、バスはどこかの大きな建物のある施設へ到着しました。
他の乗客について蒼山も歩くと、入り口のところで人々は首筋に何かを埋め込まれていました。
蒼山も首筋に何かを打たれます。
一定の間隔を開けて移動した蒼山たちは、建物内のアナウンスに従って行動します。
コンクリートの建物の一角には小さなロッカーが並んであり、アナウンスに従って蒼山は、自由と友愛のしるしであるパーカーをロッカーから取り出すと羽織って建物内へ入ります。アナウンスでは、分からないことがあれば部屋に置かれている「バイブル」を読めと繰り返し案内されました。それは、蒼山を誘ったポールも言っていたことです。
ビジネスホテルの一室に似た部屋が、蒼山にあてがわれます。部屋には生活用具一式が完備されており、居心地はよさそうです。部屋に入った蒼山は、置かれている「バイブル」を手に取ります。それはハードカバーの本のようなもので、この建物での暮らし方と理念について記載されているようでした。しかし蒼山は面倒くさくなって、途中で読むのをやめます。
部屋に乾パンが置かれてあったので、何日か蒼山は個室の中だけで過ごしました。部屋にこもっているのにも飽きた蒼山は、数日後、バイブルを読んで建物内にプールがあると知ります。部屋に置かれていた水着を手にすると、蒼山は部屋を出て出かけていきました。
プールは広くてきれいな場所でした。そこには多くの若い男女がおり、遊んでいます。ひとりの女性が蒼山に近づくと、「822」という数字が記された名刺大の紙切れを渡して去りました。その紙片は蒼山の部屋の机にも置かれてあり、蒼山の部屋番号が記載されていました。
プールサイドでチェアに体を横たえている、若い女性・末永緑がいます。但しこの施設では互いを名前で区別する必要がありませんので、名乗ることなどありません。あいさつは「ハイ、フェロー」と最初に言い、その次に相手を褒めることばを入れるだけです。その礼儀さえわきまえれば、あとは何をしていても構いませんでした。
プールサイドに横たわっている緑のところへ男性が何人かやってくると、先ほど蒼山ももらった紙片を緑へ渡していました。蒼山は緑に紙片の質問をすると、緑は面白そうな表情を浮かべると「日が暮れたらその番号の部屋へ行く」と話します。気に入った相手に部屋番号の書かれた紙を書いて誘っているのだと教えた緑は、「行かないのは失礼だ」と言いました。会話をしている間にも、蒼山に紙を渡しに来た女性がもう1人おり、緑は「ダブルヘッダーだ、すっごい」と喜びます。
〔日本の失踪者 8万4865人〕←映画序盤ではこのように、ときどき数字がさしはさまれます
緑のアドバイスを聞いた蒼山は、その通りにします。夜、822号室の部屋をノックすると、渡してくれた女性のところへ行って関係を持ちました。その女性はネットカフェで寝泊まりしており、居場所がなくてこの場所へ来たのです。
〔ネットカフェ難民 9851人〕
紙を渡してくれたもう1人の女性のところへ急ごうとしていた蒼山に、ネットカフェの女性は「義務じゃないけど」と話します。緑の言葉を真に受けた蒼山に対し、すぐ分かる嘘を信じたのかと女性は笑いました。
この建物では、挨拶さえきちんとすれば、あとは住人が何をしていても構わないのです。施設内にはプールだけでなく、ほかにも遊技場がありました。また気に入った相手を誘って自由にセックスすることもできます。
別の日、プールサイドで蒼山は緑とまた話をします。バスに乗って施設に来てから、ずっと乾パンを食べていたと蒼山が言うと、緑は笑いました。食堂へ行ってみろと蒼山に言います。
食堂と呼ばれる場所へ行くと、住人たちがモニターに向かって座っていました。モニターに表示されているところへ文字を入力し、絶賛すれば目の前にある場所に食べ物が現れる仕組みです。知らない事柄に対してコメントを求められた蒼山は戸惑いますが、隣の席に座った男性に聞くと、テンプレがありました。それを見ながら入力すると、目の前のガラス張りのケースの中に、食べ物が出てきます。
〔倒産 8235社/年〕
〔自己破産 7万3084件/年〕
蒼山の隣の席の小太りの男性は、事業に失敗して自己破産をしたのですが、借金取りに金の返済を迫られていました。首を絞めて殺されようとしていたところを、黄色いツナギの男たちに救われていました。黄色いツナギは、蒼山を救ったポールだけでなくほかにもたくさんいます。施設の従業員も黄色いツナギの男で、「チューター」と呼ばれていました。住人たちは「ジュード」と呼ばれています。
隣の席の男は蒼山に、別の部屋の地下に賞味期限切れの食べ物がたくさん置かれていると言い、誘いました。
〔食品廃棄物 2775トン/年〕
腐りかけているものもあるけれど、賞味期限切れのものは代価なしで手に入ると男が言いますが、蒼山は「今日はやめとく」と答えると、目の前のSNS入力作業に戻ります。部屋の中でチャイム音が鳴ると、「絶賛タイム」から「ディスりタイム」に変わりました。今度は一転して、SNSでさまざまなことに対して罵倒する内容を入力する作業に変わります。
部屋に戻った蒼山は、バイブルに目を通してみました。性行為は互いが合意すれば、いつどこでしてもかまいません。但し結婚と妊娠は禁止されており、部屋には避妊具が完備されていました。
〔人工中絶 16万8015件/年〕
施設での暮らしに蒼山が慣れた頃、緑が「バスに乗りなよ」と誘います。緑と一緒にバスに乗った蒼山は、外界の世界に出かけました。バスにはほかにも、たくさんの男女が乗り合わせています。
車中で着替えをさせられた蒼山たちは、どこかの町へ行くと何者かの選挙の投票を代行します。投票用紙には誰かの名前が書かれているのですが、その人物がどこにいるのかは分かりません。また投票する人物は決められており、それを書くよう命じられます。
〔平均投票率 53.8%〕
〔投票したことがない人 706万人〕
バスの中でまた着替えをして変装した蒼山たちは、知らない街をいくつか転々として投票しました。投票だけではありません。別のところではスマホを渡されて、開店前の店の前に行列を作って並びます。開店後に店へ入って注文し、写真を撮ってSNSにアップして絶賛しました。
カウンターのところでポークバーガーを注文した男性を見た緑が、「共食いだ」と大笑いします。男性は、蒼山に食堂で教えてくれた小太りの男性でした。太っていることを緑がからかったわけですが、男性のほうは全く気にしていません。
緑は若くて美しくスタイルもよいので、男性にもてる人物でした。蒼山と一緒にいるときも、次から次へと紙片を渡されます。緑は蒼山が一風変わった人物であることを気に入っており、それであれこれ親切にしていました。蒼山が紙片を渡しますが、緑は紙切れを捨てます。肉体関係を持たない関係を緑は望み、蒼山も応じました。
〔総人口 1億2632万人〕
〔完全失業者 137万人〕←ここで数字は終わり
ネットカフェで働く女性が部屋の片づけをしながら、同じ従業員の男性に聞きます。ネットカフェで寝泊まりしていた人たちは、どこへ連れて行かれるのだろうと女性が聞くと、男性は「噂では、町全体が収容所みたいなところ」と答えました。2人とも、怖いなと言い合います。
その噂は本当でした。蒼山たちが戻る施設は、超大型マンションのような建物です。大自然に囲まれた周囲と隔絶された場所に建てられた施設には、蒼山たちみたいに居場所のない者が連れてこられ、部屋を与えられているのです。
バスで戻ってきた蒼山や緑たちは、その日の報酬として紙袋に入った食料を受け取りました。労働の対価です。あとは自由時間なので、蒼山は部屋に戻ります。
蒼山の部屋へメガネをかけた女性がやってくると、あいさつをしました。女性が来たので蒼山が服を脱がそうとしますが、女性は拒みました。何か悩みでもあるのかと、蒼山は話を聞きます。
女性は蒼山に、ここで暮らしていると怒りの感情が湧かないと言います。この場所へ来る前、女性は嫉妬に狂って人を殺したことがあるのだと話しました。自分だけでなくこの建物には人殺しの過去を持つものは結構いると言います。それを聞いても蒼山は「ふーん」と答えるだけでした。蒼山も、すでにある種の感情が麻痺しかかっています。
その夜、また施設には大勢の住人が連れてこられました。右も左も分からない人たちが、ベルトコンベアのように運ばれ、アナウンスを聞いて移動します。
翌朝、メガネの女性に気に入られた蒼山は、秘密を教えると言ってある場所へ連れていかれました。施設の別のエリアには、子どもたちだけを集めた場所がありました。そこにいる少女を指して、メガネの女性は「私の娘なの」と言います。施設へやってきたときに親子は引き離されて、子どもは子どもたちだけで育てられるようです。
都会で働く女性・木村紅子のところへ妹の夫・末永がやってきます。末永は自分の妻(紅子の妹)の所在を知らないかと聞き、強引に紅子の部屋へ入り込んで探しました。実は紅子は以前、妹に助けを求められて断っていました。末永がやってきたことで、妹と姪のももがいなくなったのだと知った紅子は、妹の行方を探そうと考えます。
蒼山もすっかり、施設での暮らしに慣れました。いつものようにプールサイドで緑たち顔なじみ数人と話をした蒼山は、施設の敷地にあるフェンスを越える度胸試しをしようと言います。暮らしは保証されていて脱走の必要性はないのですが、やってみようということになりました。フェンスはちゃちな木の柵で高さも1mほどで、なんなく乗り越えられます。
蒼山ら男性3人が乗り越えて外へ歩くと、脳内に大音量の音楽が流れ始めます。命の危険を感じた蒼山たちは、急いで戻りました。入所時に首筋に何かを打たれたときに、脳内に埋め込まれたようです。黄色いツナギの男たちはバスに乗って出かけるとき、黒い装置を持っていました。その装置が機能している間は、蒼山たちの脳内に埋め込まれた器具が鳴らないようになっています。
治験に参加した蒼山たちは報酬として服をもらいますが、その場所で、薬を打たれたあと具合が悪くなり絶叫する女性を目撃しました。その後、その女性を施設内で見かけることはありませんでした。死んだら埋葬されるのだろうかと仲間たちと話した蒼山は、この施設は同じ年齢の男女を収容したもので、ほかにもいくつか建物があり、シニア専用の町もあるのだと聞きました。しかしその話をするのはご法度らしく、噂を始めると脳内で音楽が鳴り始めました。黄色いツナギの男が黒い機械の「充電切れ」とごまかしますが、本当かどうかは分かりません。
妹の行方を探した紅子は、テレビニュースで妹を目撃しました。担ぎ込まれた病院へ行って安否を確かめますが、対応した医師の反応がおかしいと気づき、怪しみます。その場をさりげなく離れたスーツ姿の男を追いかけて質問すると、スーツ姿の男は紅子に、バスへの乗り方を記した紙を渡しました。「そこへ行くと自分を見失うかもしれない」とスーツの男は警告しますが、紅子は「かまいません」と答えます。
紙に書かれた場所へ行くと、バスが止まっていました。施設入所のサインをし乗り込んだ紅子は、睡眠薬のようなものをのまされて眠り込みました。バスに降りて施設に入った紅子は、首筋に何かを打ち込まれます。アナウンスを頼りに、紅子は施設へ入りました。
翌日、施設のプールへやってきた紅子は、緑を見つけて駆け寄ると心配したと声をかけます。紅子は、緑の姉でした。紅子は外の世界へ戻ろうと緑を説得しようとしますが、緑は今の施設での生活に何も不満がありません。そばで見聞きしていた蒼山は、紅子のことが心配になります。ももを探す紅子を案内した蒼山は、子どもだけ集められた施設へ連れていきました。そこにももがいるのを見て、紅子は安堵します。
紅子は緑を説得できないと知ると、ひとりで施設を脱走しようとします。紅子を案じて付き添った蒼山は、フェンスを越えて脱走はできないと言いますが、紅子はそれでも逃げようとします。
蒼山はここにいれば暮らしが保証されると言いますが、紅子は「私は(ここにいても)何も感じない」といって、外の世界へ戻りたがりました。蒼山は紅子に感化され、一緒に外に出て紅子と暮らそうと考えます。
蒼山は紅子と逃亡計画を練りました。深夜に火災報知機を鳴らし、黄色いツナギの男たちが見回りに出たすきをみはからい、控室に置かれている黒い機械を盗みます。子どもたちの部屋にいるももを連れて出た蒼山と紅子は、施設から脱走しました。脱走する人がいないため、警備はゆるゆるです。
蒼山と紅子は歩いてふもとまで移動しようとしますが、途中で黒い機械のバッテリーが切れました。
脳内で音楽が鳴り始め、車で蒼山たちを探していた女性チューターに見つかります。
車に乗せられた蒼山は、女性チューターを殴って車を奪い、紅子とももを連れて脱走しました。
3人は紅子が住んでいたマンションへ行きますが、そこにはすでに別の人が入居していました。
役所で問い合わせをしても、木村紅子という該当者はいないことになっています。
戸籍がない3人は泊まるところもなく、たちまち困ります。
外の世界ではお金が必要で、蒼山はコンビニで強盗を計画します。
3人で海を見て過ごしていると、紅子が倒れました。
病院へ連れていった蒼山は、紅子が妊娠していると聞きます。
そこへポールが現れると、蒼山に「(逃亡生活は)疲れただろう」と声をかけました。
施設に戻ればいいように扱うと誘いますが、蒼山は「自分たちの力で生きたい」と答えます…。
…蒼山、紅子、ももは1つの広いベッドで、3人で寄り添って眠っていました。
起きた蒼山は支度をして出かけていきます。
蒼山は黄色いツナギを着て、チューターの仕事をしていました。
新人を連れてきた蒼山は、高台で遠くの景色を眺めながら
「この景色が美しいのは、自由だからだよ」と声をかけます…。
THE END
=====
筆者の公式サイト
話題の映画とか一過性の映画でなくて、
100年経過しても名作と言われる映画を追いかける
=====
★数行で映画紹介しなければ
衣食住が保証され快楽をむさぼる日々を送れるが、
決して離れることはできない奇妙な町を舞台に描くミステリー。
★ショウトしょうとSHORT
奇妙な話です なぜか印象が残ります
立花恵理 に 見入りました いい女だ。
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★概要ネタバレは基本情報のあとに
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★基本情報
監督 荒木伸二
脚本 荒木伸二
製作
菅野和佳奈
関友彦
製作総指揮 木下直哉
武部由実子
出演者 中村倫也
石橋静河
立花恵理
橋野純平
植村宏司
菅野莉央
松浦祐也
草野イニ
川村紗也
柳英里紗
山中聡
音楽 渡邊琢磨
撮影 四宮秀俊
編集 長瀬万里
制作会社 コギトワークス
製作会社 木下グループ
「人数の町」製作委員会
配給 キノフィルムズ
公開 日本の旗 2020年9月4日
上映時間 111分
★概要ネタバレ
借金取りに追われた蒼山は、ビル街の隙間に逃げ込んだものの追いつかれ、殴られます。
ポールがやってくると、借金取りを殴って気絶させた。
面識のないポールが出現して自分を救ってくれたのに戸惑い、
状況を呑み込めずにいた。
ポールに「居場所ないんだろ、(居場所)いるか?」と言われ、誘われてバスに乗り込んだ。
蒼山が乗り込んだバスには、ほかにも大勢の人が乗っていました。
バスはひたすら長い距離を移動します。
日がとっぷり暮れて夜中になった頃、バスはどこかの大きな建物のある施設へ到着しました。
他の乗客について蒼山も歩くと、入り口のところで人々は首筋に何かを埋め込まれていました。
蒼山も首筋に何かを打たれます。
一定の間隔を開けて移動した蒼山たちは、建物内のアナウンスに従って行動します。
コンクリートの建物の一角には小さなロッカーが並んであり、アナウンスに従って蒼山は、自由と友愛のしるしであるパーカーをロッカーから取り出すと羽織って建物内へ入ります。アナウンスでは、分からないことがあれば部屋に置かれている「バイブル」を読めと繰り返し案内されました。それは、蒼山を誘ったポールも言っていたことです。
ビジネスホテルの一室に似た部屋が、蒼山にあてがわれます。部屋には生活用具一式が完備されており、居心地はよさそうです。部屋に入った蒼山は、置かれている「バイブル」を手に取ります。それはハードカバーの本のようなもので、この建物での暮らし方と理念について記載されているようでした。しかし蒼山は面倒くさくなって、途中で読むのをやめます。
部屋に乾パンが置かれてあったので、何日か蒼山は個室の中だけで過ごしました。部屋にこもっているのにも飽きた蒼山は、数日後、バイブルを読んで建物内にプールがあると知ります。部屋に置かれていた水着を手にすると、蒼山は部屋を出て出かけていきました。
プールは広くてきれいな場所でした。そこには多くの若い男女がおり、遊んでいます。ひとりの女性が蒼山に近づくと、「822」という数字が記された名刺大の紙切れを渡して去りました。その紙片は蒼山の部屋の机にも置かれてあり、蒼山の部屋番号が記載されていました。
プールサイドでチェアに体を横たえている、若い女性・末永緑がいます。但しこの施設では互いを名前で区別する必要がありませんので、名乗ることなどありません。あいさつは「ハイ、フェロー」と最初に言い、その次に相手を褒めることばを入れるだけです。その礼儀さえわきまえれば、あとは何をしていても構いませんでした。
プールサイドに横たわっている緑のところへ男性が何人かやってくると、先ほど蒼山ももらった紙片を緑へ渡していました。蒼山は緑に紙片の質問をすると、緑は面白そうな表情を浮かべると「日が暮れたらその番号の部屋へ行く」と話します。気に入った相手に部屋番号の書かれた紙を書いて誘っているのだと教えた緑は、「行かないのは失礼だ」と言いました。会話をしている間にも、蒼山に紙を渡しに来た女性がもう1人おり、緑は「ダブルヘッダーだ、すっごい」と喜びます。
〔日本の失踪者 8万4865人〕←映画序盤ではこのように、ときどき数字がさしはさまれます
緑のアドバイスを聞いた蒼山は、その通りにします。夜、822号室の部屋をノックすると、渡してくれた女性のところへ行って関係を持ちました。その女性はネットカフェで寝泊まりしており、居場所がなくてこの場所へ来たのです。
〔ネットカフェ難民 9851人〕
紙を渡してくれたもう1人の女性のところへ急ごうとしていた蒼山に、ネットカフェの女性は「義務じゃないけど」と話します。緑の言葉を真に受けた蒼山に対し、すぐ分かる嘘を信じたのかと女性は笑いました。
この建物では、挨拶さえきちんとすれば、あとは住人が何をしていても構わないのです。施設内にはプールだけでなく、ほかにも遊技場がありました。また気に入った相手を誘って自由にセックスすることもできます。
別の日、プールサイドで蒼山は緑とまた話をします。バスに乗って施設に来てから、ずっと乾パンを食べていたと蒼山が言うと、緑は笑いました。食堂へ行ってみろと蒼山に言います。
食堂と呼ばれる場所へ行くと、住人たちがモニターに向かって座っていました。モニターに表示されているところへ文字を入力し、絶賛すれば目の前にある場所に食べ物が現れる仕組みです。知らない事柄に対してコメントを求められた蒼山は戸惑いますが、隣の席に座った男性に聞くと、テンプレがありました。それを見ながら入力すると、目の前のガラス張りのケースの中に、食べ物が出てきます。
〔倒産 8235社/年〕
〔自己破産 7万3084件/年〕
蒼山の隣の席の小太りの男性は、事業に失敗して自己破産をしたのですが、借金取りに金の返済を迫られていました。首を絞めて殺されようとしていたところを、黄色いツナギの男たちに救われていました。黄色いツナギは、蒼山を救ったポールだけでなくほかにもたくさんいます。施設の従業員も黄色いツナギの男で、「チューター」と呼ばれていました。住人たちは「ジュード」と呼ばれています。
隣の席の男は蒼山に、別の部屋の地下に賞味期限切れの食べ物がたくさん置かれていると言い、誘いました。
〔食品廃棄物 2775トン/年〕
腐りかけているものもあるけれど、賞味期限切れのものは代価なしで手に入ると男が言いますが、蒼山は「今日はやめとく」と答えると、目の前のSNS入力作業に戻ります。部屋の中でチャイム音が鳴ると、「絶賛タイム」から「ディスりタイム」に変わりました。今度は一転して、SNSでさまざまなことに対して罵倒する内容を入力する作業に変わります。
部屋に戻った蒼山は、バイブルに目を通してみました。性行為は互いが合意すれば、いつどこでしてもかまいません。但し結婚と妊娠は禁止されており、部屋には避妊具が完備されていました。
〔人工中絶 16万8015件/年〕
施設での暮らしに蒼山が慣れた頃、緑が「バスに乗りなよ」と誘います。緑と一緒にバスに乗った蒼山は、外界の世界に出かけました。バスにはほかにも、たくさんの男女が乗り合わせています。
車中で着替えをさせられた蒼山たちは、どこかの町へ行くと何者かの選挙の投票を代行します。投票用紙には誰かの名前が書かれているのですが、その人物がどこにいるのかは分かりません。また投票する人物は決められており、それを書くよう命じられます。
〔平均投票率 53.8%〕
〔投票したことがない人 706万人〕
バスの中でまた着替えをして変装した蒼山たちは、知らない街をいくつか転々として投票しました。投票だけではありません。別のところではスマホを渡されて、開店前の店の前に行列を作って並びます。開店後に店へ入って注文し、写真を撮ってSNSにアップして絶賛しました。
カウンターのところでポークバーガーを注文した男性を見た緑が、「共食いだ」と大笑いします。男性は、蒼山に食堂で教えてくれた小太りの男性でした。太っていることを緑がからかったわけですが、男性のほうは全く気にしていません。
緑は若くて美しくスタイルもよいので、男性にもてる人物でした。蒼山と一緒にいるときも、次から次へと紙片を渡されます。緑は蒼山が一風変わった人物であることを気に入っており、それであれこれ親切にしていました。蒼山が紙片を渡しますが、緑は紙切れを捨てます。肉体関係を持たない関係を緑は望み、蒼山も応じました。
〔総人口 1億2632万人〕
〔完全失業者 137万人〕←ここで数字は終わり
ネットカフェで働く女性が部屋の片づけをしながら、同じ従業員の男性に聞きます。ネットカフェで寝泊まりしていた人たちは、どこへ連れて行かれるのだろうと女性が聞くと、男性は「噂では、町全体が収容所みたいなところ」と答えました。2人とも、怖いなと言い合います。
その噂は本当でした。蒼山たちが戻る施設は、超大型マンションのような建物です。大自然に囲まれた周囲と隔絶された場所に建てられた施設には、蒼山たちみたいに居場所のない者が連れてこられ、部屋を与えられているのです。
バスで戻ってきた蒼山や緑たちは、その日の報酬として紙袋に入った食料を受け取りました。労働の対価です。あとは自由時間なので、蒼山は部屋に戻ります。
蒼山の部屋へメガネをかけた女性がやってくると、あいさつをしました。女性が来たので蒼山が服を脱がそうとしますが、女性は拒みました。何か悩みでもあるのかと、蒼山は話を聞きます。
女性は蒼山に、ここで暮らしていると怒りの感情が湧かないと言います。この場所へ来る前、女性は嫉妬に狂って人を殺したことがあるのだと話しました。自分だけでなくこの建物には人殺しの過去を持つものは結構いると言います。それを聞いても蒼山は「ふーん」と答えるだけでした。蒼山も、すでにある種の感情が麻痺しかかっています。
その夜、また施設には大勢の住人が連れてこられました。右も左も分からない人たちが、ベルトコンベアのように運ばれ、アナウンスを聞いて移動します。
翌朝、メガネの女性に気に入られた蒼山は、秘密を教えると言ってある場所へ連れていかれました。施設の別のエリアには、子どもたちだけを集めた場所がありました。そこにいる少女を指して、メガネの女性は「私の娘なの」と言います。施設へやってきたときに親子は引き離されて、子どもは子どもたちだけで育てられるようです。
都会で働く女性・木村紅子のところへ妹の夫・末永がやってきます。末永は自分の妻(紅子の妹)の所在を知らないかと聞き、強引に紅子の部屋へ入り込んで探しました。実は紅子は以前、妹に助けを求められて断っていました。末永がやってきたことで、妹と姪のももがいなくなったのだと知った紅子は、妹の行方を探そうと考えます。
蒼山もすっかり、施設での暮らしに慣れました。いつものようにプールサイドで緑たち顔なじみ数人と話をした蒼山は、施設の敷地にあるフェンスを越える度胸試しをしようと言います。暮らしは保証されていて脱走の必要性はないのですが、やってみようということになりました。フェンスはちゃちな木の柵で高さも1mほどで、なんなく乗り越えられます。
蒼山ら男性3人が乗り越えて外へ歩くと、脳内に大音量の音楽が流れ始めます。命の危険を感じた蒼山たちは、急いで戻りました。入所時に首筋に何かを打たれたときに、脳内に埋め込まれたようです。黄色いツナギの男たちはバスに乗って出かけるとき、黒い装置を持っていました。その装置が機能している間は、蒼山たちの脳内に埋め込まれた器具が鳴らないようになっています。
治験に参加した蒼山たちは報酬として服をもらいますが、その場所で、薬を打たれたあと具合が悪くなり絶叫する女性を目撃しました。その後、その女性を施設内で見かけることはありませんでした。死んだら埋葬されるのだろうかと仲間たちと話した蒼山は、この施設は同じ年齢の男女を収容したもので、ほかにもいくつか建物があり、シニア専用の町もあるのだと聞きました。しかしその話をするのはご法度らしく、噂を始めると脳内で音楽が鳴り始めました。黄色いツナギの男が黒い機械の「充電切れ」とごまかしますが、本当かどうかは分かりません。
妹の行方を探した紅子は、テレビニュースで妹を目撃しました。担ぎ込まれた病院へ行って安否を確かめますが、対応した医師の反応がおかしいと気づき、怪しみます。その場をさりげなく離れたスーツ姿の男を追いかけて質問すると、スーツ姿の男は紅子に、バスへの乗り方を記した紙を渡しました。「そこへ行くと自分を見失うかもしれない」とスーツの男は警告しますが、紅子は「かまいません」と答えます。
紙に書かれた場所へ行くと、バスが止まっていました。施設入所のサインをし乗り込んだ紅子は、睡眠薬のようなものをのまされて眠り込みました。バスに降りて施設に入った紅子は、首筋に何かを打ち込まれます。アナウンスを頼りに、紅子は施設へ入りました。
翌日、施設のプールへやってきた紅子は、緑を見つけて駆け寄ると心配したと声をかけます。紅子は、緑の姉でした。紅子は外の世界へ戻ろうと緑を説得しようとしますが、緑は今の施設での生活に何も不満がありません。そばで見聞きしていた蒼山は、紅子のことが心配になります。ももを探す紅子を案内した蒼山は、子どもだけ集められた施設へ連れていきました。そこにももがいるのを見て、紅子は安堵します。
紅子は緑を説得できないと知ると、ひとりで施設を脱走しようとします。紅子を案じて付き添った蒼山は、フェンスを越えて脱走はできないと言いますが、紅子はそれでも逃げようとします。
蒼山はここにいれば暮らしが保証されると言いますが、紅子は「私は(ここにいても)何も感じない」といって、外の世界へ戻りたがりました。蒼山は紅子に感化され、一緒に外に出て紅子と暮らそうと考えます。
蒼山は紅子と逃亡計画を練りました。深夜に火災報知機を鳴らし、黄色いツナギの男たちが見回りに出たすきをみはからい、控室に置かれている黒い機械を盗みます。子どもたちの部屋にいるももを連れて出た蒼山と紅子は、施設から脱走しました。脱走する人がいないため、警備はゆるゆるです。
蒼山と紅子は歩いてふもとまで移動しようとしますが、途中で黒い機械のバッテリーが切れました。
脳内で音楽が鳴り始め、車で蒼山たちを探していた女性チューターに見つかります。
車に乗せられた蒼山は、女性チューターを殴って車を奪い、紅子とももを連れて脱走しました。
3人は紅子が住んでいたマンションへ行きますが、そこにはすでに別の人が入居していました。
役所で問い合わせをしても、木村紅子という該当者はいないことになっています。
戸籍がない3人は泊まるところもなく、たちまち困ります。
外の世界ではお金が必要で、蒼山はコンビニで強盗を計画します。
3人で海を見て過ごしていると、紅子が倒れました。
病院へ連れていった蒼山は、紅子が妊娠していると聞きます。
そこへポールが現れると、蒼山に「(逃亡生活は)疲れただろう」と声をかけました。
施設に戻ればいいように扱うと誘いますが、蒼山は「自分たちの力で生きたい」と答えます…。
…蒼山、紅子、ももは1つの広いベッドで、3人で寄り添って眠っていました。
起きた蒼山は支度をして出かけていきます。
蒼山は黄色いツナギを着て、チューターの仕事をしていました。
新人を連れてきた蒼山は、高台で遠くの景色を眺めながら
「この景色が美しいのは、自由だからだよ」と声をかけます…。
THE END
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筆者の公式サイト
話題の映画とか一過性の映画でなくて、
100年経過しても名作と言われる映画を追いかける
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